Journal of Science EGGS
2021 - Vol. 4

2021 - Vol. 4

秋田県における地上でのμ粒子検出頻度と天気ごとの地上気温、湿度、気圧との偏相関 J. Sci. EGGS, 4, 2110004(2021)
Partial correlation between the frequency of muon detection on the ground in Akita Prefecture and the surface temperature, humidity, and atmospheric pressure for each weather
熊谷 洸希 , 渋谷 遥斗 , 森内 厚佑 , 水谷 凜都 , 登藤 成琉 , 丸田 京華 , 秋山 翔希 , 西 隆博 , 田中 香津生 , 遠藤 金吾
Kouki KUMAGAI , Haruto SHIBUYA , Kousuke MORIUCHI , Rinto MIZUTANI , Naru TODO , Kyoka MARUTA , Shoki AKIYAMA , Takahiro NISHI , Kazuo S. TANAKA , Kingo ENDO
Received: September 10, 2021
Accepted: October 14, 2021
Released: November 05, 2021
Keywords: μ粒子, 気温, 気圧, 天気, 偏相関
muon, temperature, atmospheric pressure, weather, Partial correlation
Abstract Full Text PDF[824K]

 本研究では、秋田県立秋田高等学校生物実験室内にμ粒子検出器CosmicWatchを設置して主に宇宙線由来のμ粒子を観測した。μ粒子が地球上の大気を通過してくることから、地球の気象とμ粒子検出について何らかの関係があると考えた。先行研究から、地上気温と気圧がともにμ粒子検出頻度と負の相関があることが分かっている。そこで先行研究で行われていない、気象要素の中から1つの要素のみを抽出するという解析を行い、新たに天気ごとの解析を行うことにした。
 今回の研究では、1つの要素を抽出し、他の要素の影響を排除した場合でも、μ粒子検出頻度と地上気温、気圧との間に負の相関があること、地上気温の方が気圧に比べμ粒子検出頻度とより相関が大きいことなどが分かった。また、天気ごとにもμ粒子検出頻度の違いやμ粒子検出頻度と各気象要素との間の相関に違いが見られることが分かった。今回の研究を通じて、μ粒子観測時の気象条件の補正に関する基礎データを得ることができた。

空席情報配信システムの製作 J. Sci. EGGS, 4, 2170003(2021)
Making of vacant seat information distribution system
高田 順正 , 原田 理郁 , 谷澤 慶香 , 佐藤 勝治
Junsei TAKADA , Masafumi HARADA , Keika YAZAWA , Katsuharu SATO
Received: March 30, 2021
Accepted: July 19, 2021
Released: September 07, 2021
Keywords: 空席検知, YOLO, 機械学習, Raspberry Pi, LINE BOT
Vacant seat detection, YOLO, Machine learning, Raspberry Pi, LINE BOT
Abstract Full Text PDF[1M]

学習室などに行ったものの空席が無かったというような経験や、コロナ対策として混雑状況の把握が重要視されていることから空席検知に着目した。既存のシステムはコスト面で導入のハードルが高いことがわかったため、既存のものに比べ安価で手間が少なく、導入しやすいシステムを製作することを目標として研究を進めた。研究をはじめた当初は、空席検知の新たな手法として二値化を用いた空席検知について研究していた。目標に適した検知の手法について模索する中で、Raspberry Piとカメラを用いて、撮影した画像を解析しその結果をLINE BOTで配信するシステムを製作するに至った。ローカル環境でこのシステムを実行したところ、多少の誤差が生じたがシステムとして機能することがわかった。今後はシステムを製作し実際に動かしていく過程で得た多くの課題を解決していくとともに、より導入しやすいシステムとして完成させたい。


Sometimes we are not able to find empty seats, such as in the school study room. The COVID-19 epidemic requires us to avoid the crowd. Based on these experiences we take notice of vacant detection systems. Since we found that cost is a hurdle to the introduction of existing vacant seat detecting systems, we set a goal to make a system that is more affordable and easier to be implemented than the existing one. At first, we conducted a study about a new way to detect vacant seats by using the method for binarizing. However, we changed our plan in researching because we learned that using AI can make vacancy detection cheaper and easier, which fits our research goal. We made a trial product that detects vacant seats with a Raspberry Pi and a camera and notifies people of the information through LINE. We ran our program in the local environment. Its output was not always exact, but it works as a system. In the future, we want to resolve some problems such as improving detection accuracy and how to install devices used for vacancy detection and make it simple to implement. Ultimately, we want people to actually use this system.on through LINE.

野外からの新規バクテリオファージの探索 J. Sci. EGGS, 4, 2130002 (2021)
Search for novel bacteriophage from the field
熱海 彩帆 , 二上 麻央 , 千葉 美智雄
Saho ATAMI , Mahiro NIKAMI , Michio CHIBA
Received: April 04, 2021
Accepted: June 02, 2021
Released: June 28, 2021
Keywords: バクテリオファージ, シュードモナス・ベロニイ, シュードモナス・ラクティス, 宿主特異性, イネ
Bacteriophage, <i>Pseudomonas veronii</i>, <i>Pseudomonas lactis</i>, Host Specificity, Rice Plant
Abstract Full Text PDF[1M]

バクテリオファージとは細菌に感染するウイルスである。産業におけるファージ感染の事例としては、納豆の製造過程で野外のイネなどからファージが混入し、納豆菌に感染して、納豆がファージに汚染されてしまうという事例がある。この事例をもとにして、ファージを採取する装置であるファージトラップを製作し、野外のイネから新規バクテリオファージを探索することを目標として研究を行った。野外のイネから採取したファージは、Pseudomonas veronii, Pseudomonas lactisの2種類の細菌を感染宿主とし、P. lactisに感染するファージの保存株P. lactisファージ(HU1)とは感染性が異なっていた。さらにP. veroniiに感染するファージの報告例が現時点ではないため、新規バクテリオファージである可能性が高い。また、P. veroniiは環境中の有害物質を分解可能な、バイオレメディエーションへの応用が期待されている細菌である。このような有用菌を溶菌させるファージを発見できたことは本菌を有用菌として活用する際の制御策や保護の観点から産業において大きな意義がある。

種々の菌株における緑茶成分(-)-エピカテキンと抗生物質アンピシリンの相互作用 J. Sci. EGGS, 4, 2130001(2021)
Interaction between the green tea constituent (-)-Epicatechin and the antibiotic ampicillin for various strains
山田 優衣 , 住谷 夏梨 , 後藤 雪琉 , 白鳥 遥菜 , 水谷 菜月 , 鈴木 理紗 , 武内 温哉 , 深井 聡輔 , 佐藤 託海 , 遠藤 金吾
Yui YAMADA , Karin SUMIYA , Yukiru GOTO , Haruna SHIRATORI , Natsuki MIZUTANI , Risa SUZUKI , Atsuya TAKEUCHI , Sosuke FUKAI , Takumi SATO , Kingo ENDO
Received: January 17, 2021
Accepted: March 16, 2021
Released: March 31, 2021
Keywords: 緑茶成分物質, 抗生物質, アンピシリン, 大腸菌, カテキン
Green Tea Component Substance, Antibiotics, Ampicillin, <i>Escherichia coli</i>, Catechins
Abstract Full Text PDF[569K]

近年、抗生物質が効かない薬剤耐性菌による感染症の拡大が深刻な問題となっているが、新規の抗生物質の開発は停滞している。また、緑茶成分物質が抗生物質の効果を促進する例も報告されている。そこで、我々は緑茶成分物質が抗生物質の効果に影響を与えるかどうかを検証し、既存の抗生物質のより効果的な利用方法の提唱を目的に研究を行った。大腸菌(Escherichia coli)AB1157株、大腸菌DH5α株、枯草菌(Bacillus subtilis)NBRC13719株、納豆菌(Bacillus subtilis)NBRC3009株に対して抗生物質アンピシリンと緑茶成分物質(-)-エピカテキンを同時に投与すると、大腸菌AB1157株のみで、(-)-エピカテキンによるアンピシリンの抗菌効果の抑制が見られた。さらに、この現象は、(-)-エピカテキンはアンピシリンに直接作用してアンピシリンを不活性化して起きたのではなく、大腸菌AB1157株の細胞の何らかの構造に作用をもたらすことによって起きたことが示唆された。