Journal of Science EGGS
2024 - Vol. 7

2024 - Vol. 7

信号反応の還元機構に糖が与える影響 J. Sci. EGGS, 7, 2420002(2024)
Effects of sugar on the reduction system of traffic light reactions
東 拓優
Takuya Higashi
Received: September 14, 2023
Accepted: October 18, 2023
Released: January 29, 2024
Keywords: 信号反応, 単糖, 二糖, 直鎖状分子
Traffic light reaction, Monosaccharide, Disaccharide, Acyclic molecule
Abstract Full Text PDF[1M]

信号反応とは、インジゴカルミンが塩基性溶液下で酸化還元反応によって、緑、赤、黄色を呈色する反応である。インジゴカルミンが酸化された時には黄色のロイコインジゴカルミンから赤色の中間体を経て緑へと変わり、還元された時には緑から赤を経て黄色へと呈色を変化させる。本研究の目的は、インジゴカルミンに対する還元剤として用いる還元に関する条件を変化させることによって糖がインジゴカルミンの色が変わる時間へ与えている影響を明らかにすることである。色が変わる時間は反応の様子を録画した後、RGB 値を用いて決定した。グルコース、ガラクトース、フルクトースの順に色が変わる時間が短かったこと、同じモル濃度のマルトース、ラクトース、グルコースの色が変わる時間が近かったことからホルミル基やカルボニル基などの還元性を示す官能基の存在量が多いほど色が変わる時間が短いと分かった。また、グルコースとガラクトースの割合を変えて混合した際の色が変わる速度のグラフがほぼ一直線上に近い形で推移したことや各単糖の濃度と信号反応を行った際の色が変わる速度のグラフがそれぞれ比例的に推移したことから、 1 種類の糖を用いた場合や2種類の糖を混合した場合であれば信号反応を用いた糖の定量を行うことが可能になると考えられる。そして、実際に清涼飲料水を用いて信号反応を行い、糖の定量を行うことが可能か確認した。

チェレンコフ光検出の最適条件 J. Sci. EGGS, 7, 2410003(2024)
How best to detect Cherenkov lights
久世 優果 , 久保田 佳歩 , 小林 南奈 , 田中 香津生
Yuka KUZE , Kaho KUBOTA , Nana KOBAYASHI , Kazuo TANAKA
Received: October 05, 2023
Accepted: October 26, 2023
Released: January 29, 2024
Keywords: チェレンコフ光, 宇宙線
Cherenkov light, cosmic ray
Abstract Full Text PDF[1M]

小型で簡易なチェレンコフ検出器を製作するため、プラスチックシンチレータを用いた放射線検出器のシンチレータをアクリルブロックに置き換えることで宇宙線のミュオン由来のチェレンコフ光の測定及びアクリルブロックの最適化を行った。本チェレンコフ検出器とシンチレータを用いた検出器を同時に通過した宇宙線を測定することで宇宙線の検出効率を評価し、天頂角度依存性測定から宇宙線が測定できていることを確かめた。さらに、アクリルブロックの高さを10 cm、20 cm、30 cm変更したところ、宇宙線の検出効率は10 cmの場合がもっとも高いことを確かめた。本チェレンコフ検出器は2 万円程度で製作可能でPCからのUSB電源供給駆動で動作し、中高生でも扱える最も手軽な検出器であるといえる。

μ粒子検出頻度の周期性と太陽活動との相関解析 J. Sci. EGGS, 7, 2410001(2024)
Correlation analysis between the periodicity of muon detection frequency and solar activity
池本 雄途 , 柴田 圭輔 , 加藤 文也 , 熊谷 洸希 , 田中 香津生 , 藤井 翼
Yuto IKEMOTO , Keisuke SHIBATA , Fumiya KATO , Kouki KUMAGAI , Kazuo S. TANAKA , Tsubasa FUJII
Received: October 06, 2023
Accepted: October 17, 2023
Released: January 29, 2024
Keywords: μ粒子, 太陽活動, 黒点相対数, 周期, 偏相関
Muon, Solar activity, Sunspot relative numbers, Periodicity, Partial correlation
Abstract Full Text PDF[988K]

秋田高校内にμ粒子検出器CosmicWatchを設置して測定してきており、これまでの観測データからμ粒子検出頻度には周期性があることが示されている。先行研究から、宇宙線と太陽活動には負の相関があることが報告されている。本研究では、μ粒子検出頻度に周期性がある要因として太陽活動の影響があることを仮定し、太陽活動データとμ粒子検出頻度のデータを用いて様々な解析を行った。太陽活動データとして、太陽活動定量評価と黒点相対数の2つの指標を用いて解析したところ、これらの年較差とμ粒子検出頻度の年較差の解析から、太陽活動とμ粒子検出頻度には負の相関があることが分かった。また、太陽活動の各データとμ粒子検出頻度のそれぞれに共通した18日周期が検出されたことから、μ粒子検出頻度の周期性の要因として太陽活動が存在することが示唆された。精度の高い解析を行うには、今後、μ粒子の測定期間を年単位で延長してデータを収集することが必要であると考えられる。